むしろここからが正念場!
キャタラーが秘める
触媒技術の可能性
長年排ガス浄化触媒をメイン事業としてきたキャタラーは、EV化、水素社会、カーボンニュートラルといった新時代のキーワードをどう読み取るか?
長年自動車メーカーの開発者として外からキャタラーを見てきた森田氏と、キャタラーで研究開発に携わり20余年、叩き上げのスキルを有する成田氏、それぞれの視点から、キャタラーの未来について熱く語った今回の対談。
2人の言葉から見えてきたのは、「排ガス浄化触媒はなくならない?」という周囲からの不安の声をものともしない、コア技術への確固たる自信と、新領域に対する純粋な好奇心でした。
TALK MEMBER
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森田 晃司研究開発本部 副本部長
島根県出身。地元の高校を出て早稲田大学理工学部・同大学院を修了後、1993年にトヨタ自動車株式会社に入社。エンジンの先行開発を担う。2021年1月には、サプライヤーである株式会社キャタラーに出向。基盤技術の研究・開発に携わり、同年6月には同社に転籍、現職に至る。自動車メーカーでの知見をキャタラーにもたらすキーマン。 -
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成田 慶一製品開発部
シニアプロジェクトマネージャー
青森県出身。地元の工業高等専門学校を卒業後、豊橋技術科学大学の大学院に編入し、触媒化学と出会う。当時の担当教授から「排ガス触媒はまだまだやれることがある」と背中を押され、1998年に株式会社キャタラーに入社。以降、ガソリン車向け触媒の開発や基盤技術の開発を経て、現職に至る。排ガス触媒の次の事業領域を描く存在に。
※掲載内容は、インタビュー当時のものです。
Theme.01
ズバリどうなる?
排ガス浄化触媒の未来
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触媒に託される先進国としての責務
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森田
まず、「キャタラーのメイン事業である排ガス浄化触媒は今後なくなっていくのか?」という問いに対する答えは、私は「NO」だとお答えします。
21世紀以降、地球温暖化が急速に進み、世の中は脱炭素社会に向けて大きく動き出しています。世界がいま置かれているこうした状況は、18世紀にイギリスで産業革命が起こって以来、先進国がたくさんのCO₂を排出しながら発展し、人々の生活を豊かにしてきた「シワ寄せ」だと思います。しかし、先進国に続いて新興国の人たちが自分たちも幸せになるために、先進国と同じような道を歩もうとしたとき、先進国がこれまで排出してきたCO₂が足枷となり、幸せになるのを妨げられるというようなことは、本来あってはなりません。CO₂の削減は、先進国の責任のもとに行われるべきです。
一方、新興国には、従来の技術である内燃機関を使って世の中を便利にしていく権利があると私は思います。中には国策としてEV化の推進を宣言している国もありますが、人口が増え始め、教育もまだまだこれからというような新興国がCO₂削減という足枷を背負いながら幸せになるのは非常に困難ですよね。
新興国が先進国と足並みを揃えて脱炭素社会に向けて取り組んでいくには、まずは先進国が培ってきた技術を使いながら発展していくことが必要です。実際、インドやASEAN諸国、アフリカ、ブラジルのような国々では、内燃機関を使いながら世の中を便利にしていくという流れが当分続くでしょう。それに対して、安価で品質のいい排ガス浄化触媒を提供していくというのは、我々キャタラーの重要な責務の一つだと考えます。
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カタチを変えて、残り続ける触媒技術
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成田
排ガス浄化触媒が存続していく意義については、森田さんがおっしゃる通りです。では、私は技術的観点からキャタラーが有する排ガス浄化触媒の技術がなぜなくならないのかという話をしたいと思います。
まず、私たちが触媒の研究開発を進める上で重視しているミッションの一つは、「貴金属を減らす」ことです。貴金属は排ガス浄化触媒に欠かせない材料である一方、とても高価な資源なので、お客様が求める製品を開発する上では、いかに少ない貴金属量で効率的に有害ガスを浄化できるかということがとても重要になってきます。
貴金属を減らす技術とは、つまり触媒が反応する活性点をよりうまく利用する技術のことであり、いま我々は、炭化水素、一酸化炭素、酸化窒素を無害なものにするためにこの技術を活用しています。しかし、たとえば触媒成分を変えるだけでも、異なる触媒反応に応用することができるように、このインアウトの関係はいろんな技術に横展開していくことが可能です。ですから、「このガスを浄化するにはこういう触媒成分にすればいい」というインアウトの関係さえきちんと整理できれば、たとえ世の中の常識が変わっても、キャタラーが培ってきた排ガス浄化触媒技術は生き残っていけるのです。
Theme.02 進むEV化に、キャタラーの解釈
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足元から将来まで貢献していける会社
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森田
新興国が発展し、先進国に近づいていけば、当然カーボンニュートラルに向けた動きはグローバル規模で進んでいくでしょうから、いずれは内燃機関の市場縮小も避けられません。そうなれば水素エネルギーや再生可能エネルギーで地球環境を守っていくという流れになっていくと思いますが、成田さんが言うように、そのとき必要な技術というのも実は排ガス浄化触媒の技術とさほど変わらないんです。つまり、当社の触媒技術は将来にも通用するコア技術なので、こうした技術の連続性の中で足元から将来までしっかりと社会に貢献していけると思います。「100年に1度の大変革期」を越えたその先も、持続可能な開発で世の中のお客様に必要とされる製品を提供し続けられるというのは、キャタラーの強みではないでしょうか。
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射程圏内の未来
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成田
「水素社会やカーボンニュートラルにおいて必要な触媒反応とは何か」、また、「その反応に有用な触媒成分とは何か」という問いは、キャタラーの中で先取りして議論されてきましたし、知見もどんどん蓄積されています。これまでのノウハウを横展開できる領域については、すでにみんなで共有しているので、今後は、「どういう技術領域で、どういうものを売っていくか」というマーケティングを含めた議論を全社で進めていくことが必要です。
大きく言えば、内燃機関の排ガス浄化触媒の技術を礎に、次はどの技術領域に狙いを定めていくかというところまでをポートフォリオとして描き、向かうべき方向をみんなで決めていきたいと考えています。何にせよ、内燃機関が減っていくという予測はネガティブに捉えるのではなく、新しい技術領域にチャレンジできるチャンスだと読み換えるべきです。「これから内燃機関が減っていくけど大丈夫? 」という不安混じりな問いを、「次のフェーズに向けてみんなで頑張ろう!」という力強いメッセージに読み替えることができる。キャタラーにはそれだけの技術力があると私たちは自負しています。むしろ、これからの方がやりがいや可能性がいっぱいあると思いますね。
Theme.03
これからのキャタラーに
必要なこと
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既存製品の拡販と仲間づくり
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森田
EV化やカーボンニュートラルに向けて、FC電池やCO₂の再生エネルギー化など新領域での研究開発を進めていくことは、当然必要なわけですが、そうした取り組みを実際のビジネスとして展開していく際には、キャタラー1社では難しいので、仲間が必要です。その「仲間づくり」という意味で今重要なのは、足元でしっかり従来の製品を売っていくこと。まずは従来のビジネスの延長線上でもっとたくさんの人にキャタラーの強みを知っていただき、「どんな仲間と手を取り合ってサプライチェーンを築いていけば、新領域におけるマーケティングやビジネスモデルを実現できるのか」を検討していくことが必要だと思います。
しかも、足元で従来の製品をしっかり売っていくことと、将来の仲間づくりを同時並行で進めていかなければ、競争に打ち勝っていけません。この2つを営業利益とシームレスにつなげていけるようなアクションプランを立てて実践していくというのが、これからの私たちの課題です。先に述べたように、キャタラーは足元から将来まで必要なコア技術を、機能開発と量産開発のセットでしっかり持っているので、その橋渡しがうまくできるような戦略を立てていきたいですね。
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課題にたどり着き、技術に読み替えて、 判断する力
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成田
森田さんが言うように、足元から将来まで良い製品を売っていくには、お客様の要求をしっかりと技術に読み替える力が必要です。「良いものが欲しい」と言われたとき、「良いものってなんだろう?」、「逆に悪いものってなんだろう?」ということを物理的な構造や化学的な性質に読み替えて、それをきちんと触媒の要素技術や製品設計に反映させていく。これはいつの時代にもずっと変わらない課題だと思っています。
しかし、それ以前の問題として、そもそもお客様との信頼関係が築かれていなければ、真の要望を汲み取ることすらできません。新しいお客様に対しては、攻略の糸口もわからないところからお付き合いがスタートします。そこから信頼関係を築いていくには、まずはお客様の課題にたどり着く力が非常に重要です。今後は、課題にたどり着く力と、それを技術や研究開発に読み替える力を磨いていくことに主体的に取り組んでいきたいと思います。
今の若い世代の人たちの優れているところは、調べて、分類して、「こうだ!」という結論までたどり着くのがとても早いことです。人工知能も駆使しながら、今ある知識を文章化して、パワーポイントに起こすなどということは、朝飯前にできてしまうかもしれません。しかし、本当に大切なのは、それをやるか・やらないかという判断力です。相手の判断を仰ぐのではなく、必要性を汲み取って自発的にプレゼンテーションを作り、「これをやります」と公言する。そういう判断力は、私自身に課している課題でもありますし、若い人も含めてみんなで身につけていきたいですね。
Theme.04 BtoCへ拡張する触媒の可能性
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キーワードは、地域密着と地道な営業
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森田
当社が新規事業を創出するにあたっては、当然ながらBtoBだけでなくBtoCもビジネスの対象となります。BtoCのビジネスの成功の鍵は「広報」が握っているといっても過言ではありませんが、広報は別に広報担当者だけがやることではないと、私は常々思っているんです。
たとえば、キャタラーは地域と共に成長していく企業ということが一つの強みで、最近では新規ビジネスとして、地元のさまざまな自治体と話をしながら、「コトビジネス」のようなことも手掛けています。コトビジネスに取り組んでいると、当然ながら地域の方々と一緒に話をしたり、困り事などをヒアリングしたりする機会があるのですが、それこそまさにチャンスだと思うんですよ。キャタラーという会社にはこういう強みがあって、生産農家の方々のお困り事を解消できる技術がたくさんあるんだということをアピールする場になりますし、地域の方々との会話の積み重ねがキャタラーの広報活動に直結すると思うんです。
また、私たちはいま本業の排ガス浄化触媒部門でも新規顧客を獲得しようと頑張っていますが、日々の営業活動の中で、新規顧客に対してキャタラーの強みを一生懸命売り込むことも、広報活動の一つと言えます。広報活動においては、こうした地道な努力の積み重ねで、キャタラーという会社を世の中の人々に広く知ってもらうことが重要ではないかと思います。
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教育や学問とリンクする
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成田
私は、キャタラーの広報担当者と「広報のあり方」についてよく話をするのですが、そこでは「教育」が今後のカギになるのではないかというのが共通の意見です。例えば、地域や企業の将来を見据えて、BtoCの「C」の対象を小学生や中学生とした場合、現在広報部門が手掛けている「WAKUWAKU理科教室」などは、その一環と言えるでしょう。理科教室には親御さんも同行するので、教室で学んだことをベースに親子の会話が広がると思うんです。それをきっかけに、親御さんもお子さんもキャタラーに興味を持っていただけるのではないでしょうか。
また、キャタラーの事業領域を学問として捉え、大学との連携によって当社の認知度を高めていくことも重要な広報活動の1つだと考えています。私たちは、普段からいろんな大学の先生方と外部連携をしているので、学生さんとも話をする機会があるんです。その際、化学部門以外の学生さんにも当社のことを認知してもらいたいので、物質工学や機械工学の先生方とも交流の機会を持つようにしています。当然、すぐにキャタラーの触媒技術のことをわかっていただくことは難しいのですが、あれこれと互いの接点を探り合っていくうちに、「あなた方のやりたいことはこういうことなんですね」と一気に理解が広がる瞬間を、私はこれまでに何度も経験してきました。だからこそ、教育や学問の世界としっかり繋がっておくことに、BtoCを攻略するカギがあると思います。
Theme.05 頼りにしてます、若手社員!
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技術に純粋でひたむきなキャタラーパーソン
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森田
私はキャタラーに来ていの一番に、社員の皆さんのことがすごく好きになったんです。技術に対して本当に純粋で、ひたむきに仕事に取り組む皆さんの姿を見て、率直に良い会社だと感じました。キャタラーには若手からベテランまで幅広い世代の社員がいますが、ベテラン社員の方々は、技術に対して「ここは譲れない」といった確固たる信念をお持ちです。そのこだわりで、非常に尖った技術開発を推し進めている一方、若い世代の社員たちを見ると、みんなすごく純粋で、「ああいう人になりたい」というオーラを発しながら一生懸命ベテラン社員について行こうと頑張っているんです。お互い上手い具合に刺激し合いながら、すごくいいサイクルで高め合っているところが素晴らしいと思いますね。
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若いひらめきとベテランの知見の相互作用
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成田
若い社員ならではの意識や多様性によって、私たちの年代では気づかなかった新たな課題を見出すことも多分にありますよね。若い社員たちの関心事が、実は次世代のものづくりの種であり、そこに技術開発のヒントが隠されている。それを実現するために議論の機会を持つことも、これからは重要だと思います。一方で若い社員たちは、こうして新たな気づきを得られるけれど、それを技術開発に読み替える力はまだない。しかし、ベテラン社員にはそれができる。こうした関係性を理解した上で、幅広い世代の皆さんの意見を吸い上げていくことが、新たな事業の創出につながるのではないかと思います。
Theme.06 入社を検討されている方へ
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最後に、現在キャタラーへの入社を検討されている方にメッセージをお送りします。まずは、自分の夢を持ってください。私たちはこの対談を通して、足元から将来に至るキャタラーの戦略イメージについてお伝えしましたが、それと同様に、ご自身の成長と、その成長の先にある夢をぜひ持ってもらいたいんです。貧困な国の救済、地球環境への貢献、地域の活性化など、どんなことでもいいので、まずはその夢に向かって一生懸命勉強してほしい。これからは、「教え・教えられる」ことよりも、「自ら学び取る」ことが求められる時代です。自分自身のスキルや専門知識をグッと伸ばして、「ここだけは誰にも負けない」という専門領域を持った人たちが集結し、小単位で実装やテストを繰り返して開発を進めていく。こうした開発スタイルを、世の中では「アジャイル的な開発」と言いますが、これからはそれが主流になっていくと思います。ですから、ぜひ自分の夢に向かって誰にも負けない専門職をしっかり身につけてください。
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また、アジャイル的な小集団においては、メンバーが互いにリスペクトし、尊重し合って、チームワークで開発を手がけていく必要があります。そのためには、協調性を身につけることも非常に大切です。
ベテラン社員は過去の成功体験から物事を判断しますが、今後は様々な多様性に対応可能な製品を作っていかなければならないので、それが正解とは限りません。そのためにも今後はアジャイル的な開発が非常に重要となってくるので、それに対応できるキャタラーの人財となるために、ぜひ自己の磨き上げに取り組んでもらいたいです。自己研鑽をしながら夢の実現を目指すことは、仕事のやりがいや楽しさにもきっとつながると思います。
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